受注型企業と自立型企業のちがい(マネジメント編)
私は、受注型企業と自立型企業の両方を経験しています。その違いをシンプルに言うと、受注型企業は「他社」の企画したものをつくり、自立型企業は「自社」の企画したものをつくるということです。両者とも商品やサービスを生み出していますが、その企画が「他社」による場合を受注型企業、「自社」による場合を自立型企業と言います。
企画が「他社」か「自社」かという違いしかないのですが、そのマネジメントはまるで異なります。私は受注型企業に勤務しているとき、親会社からかなり無茶な納期や仕様を要求されることが幾度となくありました。その仕事をする担当者の立場からすると、それは大変苦しい状況ではありますが、経営者からすると、とてもありがたいことでもあるのです。というのは、自社のマネジメントを親会社がしてくれるようなものだからです。
それは納期ひとつをとってみても、納期の短縮を迫る人間が、外部のお客さんの場合と、社内の経営者なり上司の場合では、担当者の受け取り方がかなり異なることからも理解できると思います。例えば、夕方5時をまわり帰宅しようと思った矢先に、本日中にやらなければならない仕事が舞い込んだとします。それを直接お客さんから頼まれると断りにくいですし、さらに、その仕事を断ってしまうと、次に仕事がもらえなくなってしまうのではないかという不安がよぎります。反対に、いつも顔を合わせている上司に頼まれた場合は、「明日にしてほしい」と言いやすいわけです。
自立型企業は常に後者の状況にあります。つまり、自立型企業において、納期とは製品の発売日に相当しますが、発売日が遅れても公表していない限り、当然お客さんはクレームを言いませんし言いようがありません。発売日だけではなく、あらゆること、例えば製品性能なども、お客さんの要求によって決まるのではなく、全て自分たちの意思によって決めていくのです。公表した性能よりも低いものを販売すれば、もちろんそれはクレームになりますが、公表前であればいくらでも低く設定することができてしまいます。つまり、その会社を高めていくのは、他の誰でもなく、自分たちの意思によって高めていかなければならないのです。
では、それらを高めていくために、経営者なり上司が社員に圧力をかけて高めていけばいいかというと、それは良い方法とは言えません。というのは、そうした支配的な職場環境からは「創造性」が生まれにくいからです。自立型企業にとって創造性は製品開発やサービス企画の源泉にあたります。そうした創造性を育むには、社員がのびのびと働くことのできる組織風土が必要になるのです。
このように自立型企業においては、のびのびと働くことのできる職場環境を保ちながらも、自らに厳しい条件を課すという、相反するような難題を克服しなければなりません。そのために経営者と社員に高い自律性が求められるのです。