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豊かな創造力を持つには

何か月か前になりますが、NHKの「プロフェッショナル」という番組で、佐藤オオキさんというデザイナーを紹介していました。エルメスやルイヴィトンなど、世界の一流ブランドから依頼が殺到する超一流デザイナーです。

番組中、そのオオキさんのデザインした商品がいくつか紹介されていたのですが、中でも感心したのは「ACUO」というガムのパッケージでした。白と緑のシンプルな色使いのデザインで、一見、どこのデザイナーでもできそうな、ありふれたデザインなのですが、それは顧客に「お菓子ではなく口臭を防ぐ医薬品」という印象を与えるための工夫であったのです。このガムは大ヒット商品となり、メーカーの売り上げ記録を塗り替えたと言います。私はこのような「ありそうでなかった発想」を生み出すことは、簡単そうでいて実はとても難しいことであると知っているだけに、大変感心したのです。

オオキさんの斬新なアイディアはどのようにして生み出されるのでしょうか。オオキさんはその秘密を番組の中で、「子どものまなざしで見る。そのために何回も頭を高速でリセットしている感じ。何分かおきにゼロにする。既成概念を常に取り除き続けている感覚」と説明しました。私はそれを聞いて、ハッとしました。既にオオキさんは、これまで人間が作り上げてきた既成概念をオールゼロ化し、自分の自由意思で意思決定をする「自由選択意思」を既に獲得していたのです。

自由選択意思とはどのようなものでしょうか。なかなか自覚しずらいかも知れませんが、私たちは普段、暗記言語や過去の経験知識によって、機械的条件反射で意思決定をしています。例えば、私たちは言語を使って思考をしていますが、その言語は、単語の組み合わせによってできています。そしてその単語の定義は自分で定義したものではなく、他の誰かが定義したものです。ですから自分の思考は、自分独自のもののように思い込んでいますが、実はそうではないのです。このため、何か斬新なアイディアを生み出そうと思っても、それら暗記言語や過去の経験知識に囚われていては、そこから生まれるものは、改良や改善、工夫といった同次元のアイデアに留まってしまいます。根本原理を覆すような次元を超えたアイディアを生み出すためには、それらの既成概念をまるっきり無視するか懐疑的にならなければなりません。

これからの時代に求められる人材は、豊かな創造力を持った人材です。なぜなら、方程式に当て嵌めれば答えがでるような仕事は、新興国やロボットが担っていくからです。私たち先進国に住む者には、今以上にゼロから何かを生み出す創造力が求められるようになるでしょう。そのためには、オオキさんのように既成概念をオールゼロ化できなければなりません。つまり、老朽化した建物を立て直すには今の建物をいったん壊さなければならないように、既成概念をいったんオールゼロ化する技術が必要になるのです。それを身に着けなければ、斬新なアイディアを生み出すことはできないでしょう。最近、「学ぶことをやめよう」というような記事をよく見かけるようになったのは、人が創造力を持つ上では、既成概念が邪魔をしてしまうということに多くの人が気付き始めている証なのです。

すべての存在は、無から生み出されています。その原理を明確に知れば、これまでの意思決定の仕組みがわかり、暗記言語や過去の経験知識が問題であったこともよくわかります。そして、それらに囚われない自由選択意思と豊かな想像力を持つことができるのです。その技術に興味がある方は気軽にご連絡いただければと思います。



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