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日本人はひとつになる力を忘れていない

ドラッカーは、日本を「同化の力をもつ稀有な民族」と評していた。外から入ってくる制度や文化を、混乱させることなく日本の文脈へ統合し、社会全体をひとつの方向へと動かす。その力こそ、明治維新を無血に近い形で成し遂げ、短期間で近代国家へと変貌させた最大の理由だと述べている。

私は、この全体で方向を感じ取る力こそ、日本人の本質だと感じている。理念が掲げられたとき、誰かが強制するわけでもないのに、人々が自然とその方向へ収束していく。ばらばらの個が、どこかで同じ気配を読み取り、同じ流れに入っていくのである。これは単なる従順さや組織力とは異なる。日本人は、理念という雰囲気を敏感に感じ取る感性を持っているのだ。

この感性は、私の宇宙観とも重なる。素粒子が集まって原子となり、原子が集まって分子となり、分子が集まって細胞となり、人間となる。階層が成立するときには、必ず一丸となるという原理が働く。海を構成する無数の水分子が、どこかで海全体の流れを感じ取るからこそ、そこに新しい性質である魚が生まれる。

日本人という集団にも、これと同じ創発の構造が宿っている。理念が示されると、人々は全体の方向を直感し、まるで大きな生命体のようにふるまい始める。その姿は、絵本のスイミーの小魚たちに似ている。一匹一匹は小さくても、群れとして動けば大きな魚となり、その力は圧倒的な強さを持つ。

歴史を振り返れば、日本が国として大きな推進力を発揮した時期には、必ず中心となる理念があった。人々はその理念を感じ取り、自分の役割を自然と理解し、一体となって動いた。ドラッカーが見抜いた日本の力とは、まさにこの創発の力なのである。

そして私は信じている。もし日本が再び明確な理念を掲げることができたなら、この民族は一丸となり、世界でも類を見ない速度で新たな社会をつくり出すだろう。なぜなら日本人は、ばらばらの個の集合ではなく、理念によってひとつの生命体として立ち上がる創発民族だからである。


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