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主体性を持つこと

縦型社会から横型社会になるにつれ、多くの人々に求められることになるであろう資質がいくつかあります。その中の「主体性を持つこと」について、ここでは述べてみたいと思います。主体性とは、自分を律する心構えを持ち「自ら責任を持って行動する態度」のことを言います。

これまでの社会は、大量生産大量消費の社会でした。そこでは効率よく生産をするために、上司の指示命令に従える従属性などが労働者に求められてきたように思います。ここで労働者は「指示命令には従わなければならない」という窮屈さはあるものの「従ってさえいれば、仮にその仕事が社会や会社に利益をもたらさなくても、それとは無関係に待遇を求めることができた」のです。そうした意味で、社会が長いあいだ縦型であったために、多くの人々の主体性を希薄なものにしてしまったのかもしれません。しかし本来、自ら責任を持って行動することは人として至極自然のことであり、他人のせいにできることなどは考えてみると案外と少ないものです。

例えば、自分の勤める会社から、かなり負荷の高い仕事を命ぜられたとします。そしてそのことによって精神的にも肉体的にも、その後の人生に影響を与えるほど、大きなダメージを受けたとします。このとき従属的な人は「それは会社のせいだ」というふうに思うでしょう。しかしほんとうは、それを実際に行動に移すと決めたのは自分である、ということに気が付かなければなりません。会社が無理やりその人を強制連行して、その仕事をやらせていたという場合は別ですが、いかにブラック企業といわれる会社であっても、そこまで強制している例はあまりないのではないでしょうか。と言っても様々な事情がありますから、いきなり何でも自己責任で行動しろと言われても、なかなか受け入れられるものではないかもしれません。しかし現状の社会を見てみてください。経営者と労働者、企業と顧客、教師と生徒、人と人の間で、互いが互いを責め合い、争いが絶えません。いつまで人類はこういうことを繰り返すのでしょうか。主体性を持つことは、そういう殺伐とした社会から脱却するためにも、必要なことなのです。

社会が縦型から横型へと移行する中で、会社組織も横型へと変化していくと考えられます。これまでの組織は経営者層を頂点とするピラミッド型の縦型構造を成していました、これからは経営者も含めた社員らが、公平に協力し合う「プロジェクトチーム」のような概念を持つ組織へと変わってゆくでしょう。それぞれのメンバーがその組織の「理念=その組織の存在目的」の具現化のために集まります。この組織は、人が人を支配しない組織であり、極めてフラットな人間関係で成り立つものです。上司と呼ばれるメンバーも存在しますが、それはこれまでの縦型組織における位置づけとは異なり、上司という役割は担いますが、立場は他のメンバーと同じものとなります。この組織の中においては、権限は存在しても権力は一切存在しないのです。ですから、メンバーに仕事を頼まれて、その結果何らかのダメージを受けたとしても、それを人のせいにすることはできません。あくまで頼まれた仕事をするかしないかは、本人の判断に任せられるのです。もし仮に、他者のせいにしてばかりだと、それはチームの士気を下げることへと繋がり、やがてその人への仕事依頼は減り、居場所を失うことになるでしょう。

主体性を持つことは、もっと広い視野で人々が尊厳のある生き方をしてゆく上でも重要になることです。従属的な人々は、自分の判断に責任を持たず、常に他者や他の何かに依存して生きてしまっている部分があります。そのような人々はやがて、人に支配され、お金に支配され、経済に支配され、情報に支配され、さらにはロボットにも支配されてしまうでしょう。それらは、人間が自分たちの幸せのために作った単なる道具であるにも関わらず、逆にその道具に支配されてしまうのです。そうなる根本原因には、それを扱う人々が主体性を持っておらず、従属的であるということが言えます。人々がこのまま主体性を持たなければ、上司はおろか、道具にまで支配され始め、虚しい未来を迎える事となるでしょう。…主体性というと、どこか孤立してしまうような寂しさを感じる人もいるかもしれません。しかし主体的な人々が連携する社会は、互いが互いのために働く、暖かくて思いやりのある社会であり、人が人を支配することのない、だれもが自分らしい生き方のできる尊厳ある社会となります。主体性を持って協力し合う関係の中で出てしまったミスや失敗は、同じく他者の主体性によってカバーしてくれたりもするわけです。そうなるためにも、まずは自分の身から正すことが大切です。



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