閲覧記事記事一覧へ

雨が降れば傘をさすという素直な心

松下電器(現:パナソニック)を一代で世界的企業に成長させた松下幸之助さんは「素直な心」について何度も繰り返し話し、その大切さについて語っていたと言います。松下幸之助さんは、「素直な心」があれば「雨が降れば傘をさす」ように、当たり前のことが当たり前にできるといいます。しかし実際の仕事の現場では、素直な心がないために、それができていないことが多いものです。

10年ぐらい前「白い巨塔」というドラマがありました。
http://www.fujitv.co.jp/b_hp/shiroikyoto/backnumber/503000008-1.html

このドラマの中で、鵜飼教授という地位の高い先生が、ある患者の初診を行い胃がんと診断します。しかしその後、部下である里見先生が再診した際、膵臓がんも併発していることに気がつきました。そのことを里見先生はすぐに鵜飼教授に報告するのですが「神経質すぎ」と取り合ってもらえません。急いで外科の財前先生にもその患者の膵臓がんを切除する手術を依頼しましたが、その膵臓がんを初診で見落とした先生が鵜飼教授であることから、手術を断ってしまったのです。というのも、財前先生は次期の教授選を控えており、鵜飼教授のプライドを損ねるようなことをすると、自分の将来に影響があると保身を考えたためです。結局その手術は鵜飼教授のプライドを傷つけないように密室のオペというかたちで行い、その患者の命はなんとか救われたのですが、ここでは「雨が降れば傘をさす=患者が病気ならば直す」という当たり前のことが素直にできなかったんですね。これはフィクションドラマなのですが、このような光景は私たちの職場でも頻繁に起きています。「雨が降れば傘をさす」ように、実際の職場で当たり前のことを当たり前に行うには素直な心が必要です。

素直な心になるためには、まず「誰に対しても耳を傾けること」ができなければなりません。上の話の例で言えば、もし鵜飼教授にその心があれば、膵臓がんの併発を見落としたという指摘を受けても、むしろそれは感謝すべきことであり、自分の成長にも繋がるし、何より患者のためになると考えることができたはずです。しかし鵜飼教授にはその心がありませんでした。その姿勢態度が部下である財前先生にも雰囲気として伝わっていたため、密室のオペというかたちで手術を行わざるを得なかったのです。

また、素直な心になるためには「私心にとらわれないこと」も大切です。これに関しても、もし財前先生が「次期の教授選に選ばれたい」という私心にとらわれていなければ、自らの保身を考えて手術を断るなどという話にはならなかったはずです。個人(ましてや医者)の保身のために患者の命が奪われるようなことがあっていいはずがありません。

話しを少し私たちの実際の仕事場に向けてみましょう。たとえばある人が作業しているところを見て「あのやり方だとミスを招く」と思っても、それを注意できなかったりすることがあります。なぜなら、作業のやり方の注意を、その人自身への否定だと相手側が受け取る事を注意する側が懸念するためです。しかしそのままでは、その人も成長しないし会社も成長しません。そのことのしわ寄せは、目に見えないところでお客さんや、会社の他の仲間が受ける事になります。この場合でも前述したように「誰に対しても耳を傾けること」「私心にとらわれないこと」が空気として社内にあれば、「雨が降れば傘をさす」ように注意することができるのではないかと思います。

「誰に対しても耳を傾ける」には、十人いれば十通りの世界の見え方があるということを、しっかり自覚することです。自分の認識が絶対正しいのだと思い込んでいては、見識の拡大はなくなり傲慢で狭い視野になっていく一方です。人にはそれぞれ育ってきた環境や受けた教育があります。私たちは、各々の記憶や経験から無意識に情報を補って認識した世界に生きているのです。それをわかっていれば「他の人からみたらこの世界はどう見えるのだろう」と考えることができ、誰に対しても耳を傾けることが自然とできるようになります。

さらに「私心にとらわれない」ためには理念を意識することです。自分の勤めている会社の理念は何か?それを意識することで、私心の中身である私利私欲にとらわれなくなります。会社は掲げた理念の具現化のために存在するのであり、個人の私利私欲のために存在するのではありません。また、理念を意識することで、一緒に仕事をする人達を、理念の具現化をめざすための仲間という関係で見ることができます。ですから、仲間から指摘があっても、それは理念の具現化に向けての指摘として、ありがたく聞き入れることができるようになるわけです。仮に仲間と逆の意見を持つ立場となったとしても、それが「理念を具現化したい」という共通の目的に根ざしている限り、私心に至る事はないでしょう。

人が素直でないことの損失は目に見えにくいものです。しかし実際には毎時間、毎日のように現場ではそのことにより小さな損失が発生しており、塵も積もれば山となると言わんばかりに、それはやがて大きな損失となって形を現します。しかし逆をとれば、この問題を解決するだけで、会社の飛躍的な発展を望める可能性を秘めているということでもあります。素直な心があれば、雨が降ったときに傘をさす事ができるでしょう。



関連記事

024 2014年05月13日(火)

感性の網

日常社会で生きている中で「何か引っ掛かる」や「理由はわからないけどこうした方がいい気がする」など、私たちは明文化できないまでも様々な考えを抱くことがあります。…

続きを読む
020 2014年04月23日(水)

主体性を持つこと

縦型社会から横型社会になるにつれ、多くの人々に求められることになるであろう資質がいくつかあります。その中の「主体性を持つこと」について、ここでは述べてみたいと…

続きを読む
013 2014年04月10日(木)

孤独の時間

人には少なからず、ひとりきりになる孤独の時間があります。これをネガティブに捉えている人は、思いの他多いのではないでしょうか。私がここで言いたいのは孤独の時間を…

続きを読む
018 2014年04月18日(金)

若者から学べ(NEET論)

若者の感性は、社会を別次元へ変革させてしまうほどの可能性を持っています。社会経験が未熟な分、良くも悪くも既存の先入観に左右されず、等身大の目線で社会を見れるか…

続きを読む
031 2014年09月06日(土)

豊かな創造力を持つには

何か月か前になりますが、NHKの「プロフェッショナル」という番組で、佐藤オオキさんというデザイナーを紹介していました。エルメスやルイヴィトンなど、世界の一流ブ…

続きを読む