閲覧記事記事一覧へ

感性について

Four windows by Takahiro Bessho on 500px.com

日常社会で生きている中で「何か引っ掛かる」や「理由はわからないけどこうした方がいい気がする」など、私たちは明文化できないまでも様々な考えを抱くことがあります。ただ、その考えを聞いた時に人は当然「理由は?どうしてそう思うの?」と聞いてくるでしょう。感性で捉えたものは、印象からくるものが多く、その理由を説明できない事も少なくありません。こうした時に、大概にして人の納得を得られず、当初の考えを捨てて論理的に筋の通っている別の考えに、不本意ながらも従うということが多くされてきています。と言っても、もちろん筋の通った論理で裏付けされた考えを、否定するわけではありません。ただ、「理由を説明できる」ということに価値基準を置きすぎていることが問題のように思うことが度々あるのです。

人は言葉にできないまでも、実に多くの事を感じて、そこから生まれる考えを持って生きています。そして、人は感性で感じる時に、非言語的な知覚の仕方で印象を捉えていることが多くあります。なので、この感性が豊かな人程ことばで説明できない様々な考えをもっており、人に自分の考えを伝える事が苦手なものです。ただこうした、本人すらも明文化が難しいような考えには優れたものが多くあるように私は思います。その感性を生かすも殺すも、本人も含め、周りにいる人々の協力次第なんですね。

人々の感性を生かしてゆくには、私たちが人と自分を比べて競い合うような競争心を持っていては難しいでしょう。理由を聞いてもすぐに答えられない相手を、無下に否定するのではなく、理由を一緒に探す手助けをしてあげたり、その相手の感性が捉えている「何か」を尊重してあげる姿勢が大切です。少し思い返せば誰にでも「理由は答えられないけどこう思う」といった考えを持った時があるのではないでしょうか。そうしたことを思えば、自分のその無根拠な考えに寄り添ってくれる人がいた場合どれだけ心強かったことか。私たちにそうした共存の意識があってこそ、そこにある感性は生かされてくるのではないでしょうか。人々が互いの異なった感性を認めて協力し合い、共存してゆく社会は素晴らしいものになると思います。



関連記事

2017年01月02日(月)

世界文明の中心は日本へ

いま世界で起きている最も大きな潮流は「分断から統合へ」である。その理由を身近な例から説明したいと思う…

続きを読む
2020年09月12日(土)

レコードの売り上げ、CDを上回る

科学より哲学、客観より主観、競争より独創、現実より本質、理性より感性。レコードが売れるのは、私たちの社会がそういう方向に向かっているからではないでしょうか。

続きを読む
2021年09月01日(水)

第11回ものづくり文化展の開催にあたり

続きを読む
2014年04月10日(木)

孤独の時間

人には少なからず、ひとりきりになる孤独の時間があります。これをネガティブに捉えている人は、思いの他多いのではないでしょうか。私がここで言いたいのは孤独の時間を…

続きを読む
2020年07月23日(木)

風の谷のナウシカと社会共通資本

先日、映画館で「風の谷のナウシカ」を観た。いま私たちが直面しているコロナ危機と、この映画のストーリーとを重ねながら、これからの社会を考えてみたかったからだ。

続きを読む